ゴールデンウィークの喧騒が過ぎ、6月は落ち着いた静かな時間が流れます。
いつ梅雨が来るのだろう・・・と懸念しつつ、晴れ間の緑のまぶしさに
「晴れてくれてよかった」と感謝します。

黒薙温泉旅館の建っている場所は、山奥です。
トロッコ電車の黒薙駅、そこから歩いて20分と口では簡単に言えますが、
到着したお客様が「膝が、膝が・・・がくがくするぅ(笑)」と言われるほど。
中に入ってみても部屋に行くまでに長い階段を下り、トイレと言えば男女別の共同トイレ。
唯一、ウォッシュレットがあるところがいいところでしょうか。
部屋にテレビも冷蔵庫もないし、おまけに携帯電波がとどかない。
いまどき、富士山だって携帯とどくのに~って思われる方もいらっしゃるでしょう。

でも、あえて私どもの旅館では、この不便さを貫きたいと思っています。
ここは奥山にある秘湯の温泉です。
不便さの中で、日常のありがたみに気づくこともできます。
温泉まで歩いて来られて、自分の体がまだまだ丈夫なことに気付けるかも。
豊富な湯量の温泉に体を浸して、自然のありがたみに感謝するかも。
もし、晴れていて、周りの大自然の景色が美しく目に焼き付いたら、記憶に残ったら・・・。
お腹がすいた時間に、普段は食べない川魚や山菜の味を覚えられるかも。
夜はテレビのない部屋で、ゆっくり体を休めることができるはず。
次の朝は、何故だか心すっきり、身体すっきり。早起きしたらもう一回朝風呂へ・・・

「~もない」、ではなくて「~がある」の考え方一つで、
何もない、と言われる温泉でも、心から楽しんでいただけるかもしれません。
私どもは、毎日こつこつ同じおもてなしを繰り返しています。
掃除にしろ、料理にしろ、お出迎えの言葉にしろ、
「こんな山奥に来て頂いて、感謝」です。
それから、いつまでも形を変えずにある自然と、豊富なお湯に「感謝」です。

これがないと、お客様をお迎えできませんものね。

6月は混雑が避けられて、空いている期間です。
ゆっくりされたい方は、ぜひお勧めします。

天女の湯